三日、四日。水雪が餅雪に変わりました。九日、十日。綿雪が粉雪になっても貴方のお姿は見えません。とても不安になりました。もう、この駅を利用してないのでは……と、しかし諦めかけたその夜、貴方が改札を潜って来られたのです。

   ありがとうございます、貴方。また私の前に、貴方。

   私は喜びに身を震わせました。心の表面に張った厚い氷が融け、愛の水脈(みお)が溢れ、草木に蕾が群がり、街の景色すら春の彩りを帯びたように感じられました。

   一番新しい記憶、一番古い記憶。出会い、別れ。その後に知った自我の混濁。ああ、今なにもかもをお伝えするには、私の知る言葉は少な過ぎます。

「貴方」

   私は夢中になって走りました。ひたすらに雪を蹴りました。貴方に駆け寄れば、夢で終わっていたものが再び現実になると信じていたのです。

「待ってください」

   ですが、やっとのことで歩く袖を掴んだ時、振り返った貴方は何と仰いました?