表向きの遺書には、こう記しておきました。

   ――私の体は○○大学の解剖実習に検体致します――

   ふふふ、あはは……貴方がその場所にいらっしゃることは分っておりますのよ。念の為、学生さん達にも伺っておきましたもの、間違いはございません。これでまた貴方にお会いできます。

   その日が訪れるまで私は、薬剤を塗布されて時を待つことでしょう。薬がひたひたに滲みた状態で。あはは、煮物みたいに。

   ねえ貴方、いつか私が作って差し上げた関東風の煮物を覚えていらっしゃいますか。美味しい美味しいと、残さず召し上がっておられましたよね。あの時は本当に嬉しかったです。

   あははは、だから今度は私自身もご賞味してください。その時、貴方はどんなお顔をなさるのでしょうか。喜んで頂けるといいのですが……。

   けれど、これだけはお願いしておきます。なんとしても私の姿を御目に焼き付けておいてくださいませ。だって、それが私の晴れ姿なのですから。一糸纏わぬ最後の晴れ姿なのですから。白い顔で無表情に微笑む私を、けしてお忘れにならないでくださいね。宜しくお願い致します。