今まで間垣の顔を写していた鏡が、突然、壁をくり貫いたかのように隣の部屋を映す。
はっきりとは覚えていないが、30分でいくらだの延長でいくらだのと受付で説明を聞いたような気もする。
よれた視線をマジックミラーの向こう側に向けると、そこにはレッドライトに照らされた大きなベッドがあった。
照明のせいで何色だか分からない、薄いキャミソールを着た女が体をくねらせている。美しく均整のとれた女の身体には傷ひとつ無い。股ぐらに息づく“軟体動物の口”を除けばだ。
――ああ、そうか。ここは覗き部屋だった。
あらためて眺めてみても、女はおよそ場末の覗き部屋にいる類の美貌ではなかった。
――亜由美に似ているな……。
ふと、助手の亜由美を思い浮かべる。女は彼女に似て、彫像のように美しかった。