汗と精液の臭いが充満しているその部屋には、お世辞にも座り心地が良いとは言えないリクライニングチェアと壁際に備え付けられた棚には箱ティッシュ、
そして椅子の横には100円ショップ製品と思われる安っぽいゴミ箱が「俺が居ないと困るだろ」とばかりに、微妙に邪魔になる位置に鎮座していた。
――どうやら、酔って覗き部屋に入ってしまったらしい。
いや、もちろん間垣とて女が嫌いな訳ではない。酔って妙な気分になっていた事も事実だ。
しかし、いくら酔っていたとは言え、さすがに覗き部屋に入ったのはこれが初めてだった。仮に射精がしたいのならば、もっと快適な空間が望ましい。普通の男ならばそう考えるはずだ。
「酔い醒ましだと思えば……まあ、いいか」
そう独りごちた間垣が諦めて椅子に腰掛けた時、不意に正面のマジックミラーがその反射を変えた。