本来は殺風景であるはずの研究室に、彼女が小さな絵やドライフラワーを飾り始めたのは間垣との交際がはじまってからだ。
机の隅には細い一輪挿しの花瓶が置かれ、そこにはあえて二輪の花が生けられている。
以前、彼女が「花も一輪だと寂しいだろうから」と言っていたのを思い出した。
関係を持ってしまった経緯はどうあれ、彼女が笑顔でいられないのならば、自分には交際する資格がないのではないか。
妻の事は妻の事だ。調査を止める気はない。
しかし、それとは別に亜由実の事も少しは考えてやらなければならない。
間垣は、そんな時期に差しかかっている自分にあらためて気付いた。